『北の国から』は心温まるホームドラマと要約されがちですが、実態は「徹底したリアリズムと登場人物の業(ごう)を描いた過酷なサスペンス」に近い側面を持っています。
純は決して清廉潔白な主人公ではありません。思春期にはタバコを吸い、嘘を重ね、友人を裏切り、東京では傷害事件を起こし、女性を妊娠させて相手の父親(菅原文太)に土下座させるなど、人間の持つズルさや弱さを一身に背負っています。倉本聰氏は「優等生の成長記録など誰も見たくない。人間が過ちを犯しながら、いかに恥をかいて生きていくかを描きたかった」と当時の取材で語っています。
また、過酷を極めたロケ現場のエピソードも枚挙にいとまがありません。氷点下での撮影中、カメラのフィルムが凍結して割れる事故が多発。田中邦衛氏をはじめとするキャスト陣は、過酷な寒冷地で実際に木を伐採し、石を運び、リアルな肉体労働に従事させられました。その徹底した「本物志向」があったからこそ、映像から立ち上る土の匂いや吐く息の白さが、時代を超えて観客を圧倒し続けるのです。
【プロの結論】家族社会学・人間関係の視点から見出すべき教訓
本作が描き出した黒板家の歴史は、現代の家族関係や人間教育における普遍的なレッスンに満ちています。
親が子どもに提供できる最大の教育とは、完璧な環境や豊富な財産を与えることではありません。「不完全でみっともない親の背中を見せ、それでも逃げずに泥をかぶって頭を下げる姿」を見せることです。タマコの一件で菅原文太演じる叔父に完熟カボチャを持って謝罪しに行った五郎の姿は、まさにその象徴でした。
【本作の鑑賞が向いている人】
・親子のコミュニケーションや家族のあり方に悩んでいる人
・便利すぎる生活に息苦しさを感じ、自分の生きる根底を見つめ直したい人
・挫折や失敗を経験し、人生をやり直したいともがいている人
【視聴に際して注意が必要な人】
・勧善懲悪やテンポの良い快活なエンタメ作品だけを求めている人
・登場人物の愚行や生々しい不倫・借金トラブルなどの重い描写に強いストレスを感じる人