ドラマの根底を貫く謎であり、視聴者に強い不気味さと切なさを与えたのが「妻と息子の顔が白い仮面に見える」という現象です。木村拓哉 ドラマ アイムホームにおいて、主人公・家路久(いえじ ひさし)は爆発事故に巻き込まれ、脳に高次脳機能障害を負いました。その結果、直近5年間の記憶が抜け落ち、なぜか前妻と娘に対しては素顔と情愛を認識できるにもかかわらず、再婚相手である現在の妻・恵(上戸彩)と義理の息子・良雄(高橋來)の顔だけが無機質な仮面に見えてしまうという異常事態に陥ります。
精神医学および物語構造の観点からアイムホーム 仮面の理由を解き明かすと、これは単なる脳の器質的障害ではなく、久の深層心理が引き起こした「心因性の防衛規制(解離)」であることが分かります。事故前の久は、証券会社のエリート営業マンとして出世と保身に憑りつかれ、冷酷かつ傲慢な性格でした。資産家の娘である恵との再婚も打算が絡んでおり、家庭を顧みず不倫を重ね、恵や良雄と一度も本気で心を通わせていなかったのです。
つまり、仮面を被っていたのは恵たちではなく、「本音を隠し、仮面夫婦として接していた久自身の心」の投影でした。自分を心から愛してくれている恵たちの温もりに触れるたび、過去の自分の愚行に対する無意識の罪悪感がブレーキをかけ、「自分にはこの家族の素顔を見る資格がない」という心理的ブロックが仮面という視覚的幻覚を生み出していました。劇中に散りばめられた「料理の味がしない」「家族の写真の顔だけが歪む」といった不気味な伏線は、久が家庭内で抱えていた心理的隔たりを如実に物語る演出でした。