『ニートと天使とえっちな家族』がこれほどまでに幅広い層の読者を獲得している最大の要因は、読者の先入観を心地よく裏切り続ける巧みなプロット構成にあります。物語の導入におけるあらすじは、一見すると典型的なファンタジー系ドタバタ劇の装いを見せています。自室に引きこもり社会との接点を断っていた無気力な青年・主人公のもとに、自称「天使」を名乗る謎めいた美少女が突如降臨することから歯車が狂い始めます。
しかし、本作の真骨頂はここからです。天使が持ち込んだ「奇妙な救済ルール」は、主人公の自立を促すためと称して、冷え切っていた家族全員を巻き込んだ過激なスキンシップや心理的駆け引きを強制するものでした。温厚そうに見えて深い鬱屈を抱えた母親、主人公を蔑視しながらも歪んだ執着を隠し持つ姉、そして無関心を装いながら決定的な秘密を握る父親など、個性豊かな登場人物たちが織り成す歪な力関係が、天使の介入によって白日の下に晒されていきます。
読者のページをめくる手を止めさせない見どころは、エロティックなテンションと息詰まるサスペンスの絶妙な配合バランスです。「次は誰のどのような秘密が暴かれるのか」「天使の真意は何なのか」という謎解き要素が常に物語を牽引しており、ライトなラブコメを期待して読み始めた読者ほど、張り巡らされた伏線とシリアスな心理描写の深さに圧倒される構造になっています。