インターネット上の至るところで目にする「俺でなきゃ見逃しちゃうね」というセリフ。その発祥は、週刊少年ジャンプで連載された冨樫義博氏によるダークファンタジーの金字塔『HUNTER×HUNTER』の単行本第11巻、No.096「9月3日⑪」です。
舞台はマフィア最大の祭典である地下競売場が混乱に陥った「ヨークシンシティ編」。幻影旅団を壊滅させるべく、マフィア界の重鎮「十老頭(じゅうろうとう)」は世界中から名だたる賞金稼ぎや暗殺者たちを高額な報酬で雇い集めました。
惨劇の幕開けとなるシーンは、ビルの監視カメラ室。会場内でネオン=ノストラードに接触した旅団の若きリーダー、クロロ=ルシルフルが、音もなく背後に回り込み、瞬きの間に女性の首筋へ強烈な「手刀」を打ち込む様子がモニターに映し出されます。モニターを監視していた並み居る殺し屋やマフィアたちが「ただ歩いてすれ違っただけ」としか認識できないなか、ただ一人、サングラスをかけた長髪オールバックの男だけが不敵な笑みを浮かべ、こう言い放ちました。
「音もなく背後へ……オレでなきゃ見逃しちゃうね」
極限の緊張感漂うハードボイルドな世界観の中で発せられたこの一言が、後に四半世紀を超えて語り継がれるネットスラングの金字塔になるとは、当時の読者も予想していませんでした。