ご飯が炊き上がった直後、ここからが時間との勝負だ。伝統的な江戸前寿司を守り続ける一流の寿司職人は、熱々の状態のご飯に手早く合わせ酢を回しかける「酢切り」の作業を何よりも重視する。
炊きたてのご飯を飯台(または広めのボウル)に移したら、合わせ酢をしゃもじにつたわせながら全体に均一に回しかける。ここでのコツは、ご飯粒を潰さないように「切るように」混ぜることだ。決して練ったりこねたりしてはならない。しゃもじを立てて縦横に刃を入れるように混ぜ合わせることで、米の表面に合わせ酢がコーティングされ、あの美しいツヤが生まれる。
混ぜ合わせたら、団扇(うちわ)やハンディファンで一気に余分な水蒸気を飛ばしながら冷ます。急速に蒸気を逃がすことで、米粒の表面が固まり、中には水分が閉じ込められた理想的な食感が完成する。