レースは序盤から引き締まったペースで流れた。逃げ宣言をしていた人気薄の馬が引っ張る中、1番人気馬は好位のインで静かに牙を研ぐ。1000メートル通過は58秒8。良馬場の速いターフとしては絶妙なミドルペースだ。
勝負の分かれ目は、府中の名物である大けやきを過ぎてからの4コーナーだった。外から仕掛けた若手騎手が馬群を飲み込もうとする一方、内角でジッと我慢していたベテラン騎手は、わずかに開いた一筋の隙間を見逃さなかった。「あそこしか通る道がなかった」。レース後、泥にまみれた騎手はそう語り、安堵の笑みを浮かべた。