「鯨の胆石」が持つ神秘性は、映像表現の歴史とも深く結びついている。ハーマン・メルヴィルが『白鯨』で描いた捕鯨船エイハブ船長の壮絶な執念は、当時の捕鯨産業が単なる鯨油採取だけでなく、こうした偶然の産物をも追い求めていた実態を映し出していた。
時が下り、伝説的な自然ドキュメンタリープレゼンターであるデヴィッド・アッテンボロー卿が手掛けた歴史的名作『ディープ・ブルー』やBBCの一連の自然ドキュメンタリーは、巨大なマッコウクジラが深海でダイオウイカと死闘を繰り広げる姿を映像化し、世界中に衝撃を与えた。深海の死闘から生まれる漂流物というドラマチックな背景が、人間界におけるその価値をさらに神話的なものへと高めている。