この偉大な彫刻を手掛けたのは誰なのか。発見当初、フランス側はクラシック期の巨匠プラクシテレスの作であると主張した。ルーヴルの威信を高めるためだ。しかし、台座の断片に刻まれていた銘文には、全く別の名が刻まれていた。
[画像: 台座刻文のレプリカとアフロディーテ像の比較]
そこに記されていたのは「アンティオキアのアレクサンドロス」という名だった。紀元前2世紀末頃に活躍した名工とされる。この刻文が存在すると「古典期の最高傑作」という宣伝文句に都合が悪かったため、一時期は台座が故意に紛失させられたという暗い逸話も残る。神話に登場する愛と美の女神アフロディーテを描いたとされる本像だが、海洋国家ミロスの守護神や勝利の女神ニケであったとする異説も絶えず、製作者と被写体を巡るドラマは今なお議論が尽きない。