「もし法律の規制がなかったら飼育できたのか」と考える愛好家も少なくありません。しかし、仮に法的なハードルを度外視したとしても、サーバルキャットを終生適切に飼育するためには、高級外車が複数台購入できるほどのサーバルキャット飼育費用が不可欠でした。
環境省が定める特定動物飼育許可基準をクリアするためには、イエネコ用の飼育用品など到底通用しません。サーバルキャットは垂直方向に3メートル近くジャンプし、強靭な咬合力と運動能力を持っています。そのため、頑丈な鉄骨構造の専用ケージ、脱走を物理的に防ぐ二重扉構造、南京錠などの厳重な施錠設備、耐震・耐風圧基準を満たした外部囲い設備が義務付けられていました。これらを満たすサーバルキャット専用ケージ設備費用は、敷地内の造成工事を含めると安くとも300万円、規模によっては500万円以上の初期投資を要します。
さらに見落とせないのが、日々のランニングコストであるサーバルキャット餌代維持費です。彼らは完全な肉食獣であり、市販の総合栄養食キャットフードのみで健康を維持することは不可能です。骨付き鶏肉、新鮮な馬肉、ウズラ、マウスなどの生肉を中心に、カルシウムやタウリンを厳密に補給する特別な食餌設計が求められます。成獣1頭の餌代だけでも月額3万円〜5万円、年間にして36万〜60万円が確実に消費されます。
医療面のリスクも極めて高額です。特定動物を診療できる獣医師は全国でも指折りであり、一般的な動物病院では診察自体を断られます。診察や血液検査を行うだけでも麻酔銃や吸入麻酔が必要となり、1回の通院で10万円以上の医療費が発生することも日常茶飯事でした。野生ネコ科動物の飼育は、純粋な経済力と特殊なコネクションを持った富裕層にしか維持できない過酷な世界だったのです。