西郷輝彦のキャリアを語る上で、歌手活動と同等、あるいはそれ以上に評価されるのが本格派俳優としての実績です。多くのアイドル歌手が演技の道で苦戦する中、西郷は泥臭い下積みを厭わず、昭和のテレビドラマ史に刻まれる2大代表作を生み出しました。
第1の転機となったのが、1973年から放送された関西テレビ制作のドラマ『どてらい男(ヤツ)』です。稀代の劇作家・花登筺が原作・脚本を手掛けた本作で、西郷は丁稚奉公から身を起こし、持ち前のど根性で戦前・戦後の混乱期を駆け抜ける主人公・山下慶造を演じきりました。鹿児島出身でありながら猛特訓で完璧な船場言葉を身につけ、泥にまみれながら理不尽に立ち向かう熱演は最高視聴率30%超を記録。歌手・西郷輝彦のイメージを完全に打ち破り、実力派俳優の評価を不動のものにしました。
そして第2の金字塔が、TBS系「ナショナル劇場」の看板時代劇『江戸を斬る』です。1975年の第2部から1981年の第6部まで、名奉行・遠山金四郎(遠山景元)役を熱演しました。西郷が演じた金四郎は、町人姿「遊び人の金さん」で見せる軽妙洒脱なユーモアと、白州で桜吹雪の刺青を顕にして悪人を一喝する凛とした威厳が完璧なコントラストを成していました。共演した松坂慶子演じる紫頭巾(おゆき)との哀歓漂う純愛描写も視聴者の涙を誘い、月曜夜8時の茶の間を独占しました。