「先祖代々の墓石に菊の紋章が刻まれている」「実家の家紋が菊紋なのだが、宮内庁に許可を取る必要があるのか」という相談も後を絶ちません。
結論として、宮内庁への許可申請や届出は一切不要であり、法的な手続きを行う窓口すら存在しません。
後鳥羽上皇が菊の花を極めて愛好し、自らの印として菊花紋を用いたことが皇室の紋章の始祖とされていますが、鎌倉時代から室町時代にかけて、皇室に功績のあった武将(楠木正成の「菊水紋」など)へ菊花紋が下賜される事例が相次ぎました。下賜された武家は誇りとして家紋に組み込み、その分家や家臣へと広がっていった歴史があります。
明治4年の太政官布告以前から受け継がれてきた家紋の多くは、十四弁や裏菊、あるいは菊に水や葉をあしらった変形紋です。これらは日本の伝統文化に根ざした正当な私有財産的記号であり、墓石に彫る、冠婚葬祭の家紋入り羽織袴を着用する、家系図に記載するといった行為は何ら法律に抵触しません。民間の自然な歴史的営みに対して、国家機関が介入することはないのです。