エッフェル塔の構造において最大の難問とされたのが、裾野に向かって大きく開いた脚部をどうやって昇降させるかという課題でした。地上部における主脚の傾斜角度は約54度に達し、第2展望台手前では約78度まで急激に立ち上がります。垂直にワイヤーを垂らす従来型の昇降機では、途中で鉄骨フレームと激突してしまうため物理的に通用しません。そこで設計者ギュスターヴ・エッフェルと技術陣が導き出した答えが、鉄道の技術と液圧工学を融合させた「斜行エレベーター」の開発でした。
ここで特筆すべきは、東脚(Est)と西脚(Ouest)に導入されたエッフェル塔エレベーター仕組み水圧式の精緻さです。塔の地下深くには巨大な水圧シリンダーと可動滑車群(プーリー)、そしてピストンが設置されています。高圧水をシリンダーへ注入・排出することで滑車の距離を伸縮させ、その動きをワイヤーで数十倍に増幅して客車を牽引します。一般的な電気モーターによる巻き上げではなく、水の圧力を利用した流体力学システムを採ることで、曲面レールを走る際の繊細な速度調整と揺れの制御を両立させたのです。
このエッフェル塔斜めエレベーター歴史詳細まとめを紐解くと、1889年の万博当時はフランスのルー・コンバリュジエ・ルパップ社製や米国オーチス社製の異なる機械が各脚に競合導入され、1899年にファイブ・リール社による改良水圧システムが完成しました。1980年代以降、運営会社(SETE)によって動力ポンプこそ近代的な高圧油圧・水圧コンピューター制御へと換装されたものの、ピストン本体や地下の巨大水槽、滑車アセンブリといった基幹部分は19世紀末の産業革命の遺産がそのまま使われています。搭乗した乗客のキャビンは傾斜角の変化に合わせて自動的に水平を保つジンバル機構を備えており、窓の外で鉄骨が斜めに遠ざかっていく浮遊感は、世界のどこを探してもここでしか味わえない体験です。