アサヒグループ大山崎山荘美術館を訪れる美術ファンの多くが息をのむのが、新館「地中館(愛称:地中の宝石箱)」の空間構成です。世界的建築家・安藤忠雄氏が設計を担当し、1996年の開館に合わせて竣工しました。周囲の緑豊かな自然景観を損なわないよう建物の大半を地下に埋設する手法が採られており、コンクリート打ち放しの冷徹な質感と周囲の樹木が見事なコントラストを描いています。
本館から地中館へと続くガラス張りの通路を抜け、打ち放しコンクリートの円形階段を静かに下りていくアプローチは、日常から切り離された地下の聖域へと誘われるような緊張感と高揚感に満ちています。薄暗い階段を下りきった先にある円形の展示室、その静謐な光の中に佇むのが、クロード・モネの代表作『睡蓮』連作です。
同館が所蔵するモネの『睡蓮』は、晩年のモネがジヴェルニーの自宅庭園を描いた大作を含み、水面に揺らぐ光と色彩の深淵を間近で鑑賞できます。天窓から注ぐ柔らかな自然光と計算し尽くされた間接照明のもと、円形展示室のカーブに沿って作品と対峙する体験は、一般的なホワイトキューブの美術館では味わえない没入感をもたらします。さらに、2008年に増築された「山手館(愛称:夢の箱)」も安藤氏の設計によるもので、こちらは直線的な箱型建築が木々の中に浮かび上がる構造となっており、地中館との対比を楽しむことができます。