赤外線撮影によって「衣服が透ける」現象は、完全なオカルトではないものの、巷で信じられているような「あらゆる服が透けて裸同然に見える」という認識は明白な誤りです。この現象を正しく理解するには、近赤外線(波長約780nm〜1400nm)の光学的特性を把握する必要があります。
人間の目に見える「可視光線」は衣服の表面で反射・吸収されますが、波長の長い赤外線は一部の物質を透過する性質を持っています。通常のデジタルカメラには赤外線を遮断するIRカットフィルターが内蔵されていますが、これを除去し、代わりに可視光を遮る赤外線透過フィルター(IRパスフィルター)を装着すると、素材を通り抜けた赤外線のみをセンサーが受光します。その結果、表面の染料パターンが消えて下地が浮かび上がるケースが生じます。
ただし、透過が起きるのは黒や濃色の薄手ナイロン、ポリエステルといった特定の化学繊維にほぼ限られます。綿(コットン)、麻、ウール、厚手のデニムなどの天然素材や高密度素材は赤外線を強く散乱・遮断するため、赤外線カメラを用いても透けることは物理的にありません。