サイゼリヤが全国展開を推し進める中で、島根県や鳥取県といった山陰エリアは最後まで未出店地域として残されていました。インターネット上では「採算が合わないのではないか」「競合他社が強いからではないか」といった憶測が飛び交っていましたが、最大の要因は極めて厳格なサプライチェーン管理とドミナント出店戦略にありました。
サイゼリヤの強みである圧倒的な低価格と高い品質は、自社工場(セントラルキッチン)で加工された食材を、鮮度を保ったままチルド(冷蔵)状態で各店舗へ毎日配送するシステムによって支えられています。配送トラックが一定時間内に巡回できる範囲内に集中出店(ドミナント展開)しなければ、物流コストが跳ね上がり、ミラノ風ドリアやパスタをあの価格帯で提供することが不可能です。
関西圏や兵庫県内の製造拠点から中国山地を越えて鳥取県へ毎日定時配送を行うには、高速道路網の整備状況や1ルートあたりの店舗密度が採算ラインに達していませんでした。つまり、単に鳥取県単体に出店したくても「1店舗だけのために長距離トラックを走らせるわけにはいかない」という製造小売業特有の物理的限界が存在していたのです。