古代の農民に対して「過酷な搾取にただ耐え、打ちひしがれて逃げ出した弱者」というイメージを持つ人は少なくありません。しかし、近年の出土木簡や地方行政文書の分析からは、まったく異なる農民像が浮かび上がっています。
当時の農民は国家の制度的欠陥を冷静に見抜き、極めて合理的な「サバイバル戦略」を講じていました。
- 法制度の逆利用:戸籍を偽造して女性比率を人為的に吊り上げ、税負担を最小限に抑えつつ、女性分の口分田はしっかり確保する。
- 労働市場の移動:逃亡した農民は野垂れ死んだわけではなく、労働力を欲していた大寺社や有力貴族の私有地(初期荘園)へ移動し、「逃亡先で賃金を稼ぐ労働者」として実利を得ていた。
- 出挙の活用と踏み倒し:公出挙(強制借金)に対して、返済不能になると集団で姿を消し、実質的に国家の種籾を持ち去る戦術をとる。
古代の農民たちは無力な被害者ではなく、国家の過剰な締め付けに対して「偽装」「移動」「私有地への鞍替え」という手段で抵抗し、律令システムを形骸化させた当事者でもあったのです。