今作の根底に流れるのは、誰もが教科書で一度は目にしたことのある古の伝承だ。日本神話の象徴的な美神「木花之佐久夜毘売」の叙事詩をベースに据えながらも、従来の穏やかなイメージは木端微塵に打ち砕かれる。スクリーンの上に立ち現れるのは、血と硝煙、そして生々しい人間の情念が渦巻く極限の世界観だ。
伝統的な時代劇の様式美を大胆に解体し、過激かつ詩的なダークファンタジーへと再構築するその手腕は、まさに異端。火中で子を産み落としたという激越な神話のエピソードが、圧倒的な映像密度で現代に蘇る。単なる神話の再現にとどまらず、乱世を生き抜く個の渇望を描き切るプロットは、観る者の倫理観すら揺さぶるはずだ。