話は1980年代末にさかのぼる。当時のハイファッションといえば、固い肩パッドや重厚な生地で身体を構築的に補正するスタイルが主流だった。しかし三宅一生氏は真逆の問いを投げかけた。「服は、人間を縛るものではなく、自由にするものではないのか?」。
そうして生まれたのが、まず服の形に裁断・縫製してからプリーツ加工を施すという逆転の発想だった。通常のプリーツ生地を仕立てる手法とは異なり、3倍近く大きく作られた衣服を機械で熱プレスする。出来上がった服は、人の動きに応じてフレキシブルに伸縮し、静止した瞬間には美しい彫刻的シルエットを描く。この技術的突破口こそが、日常着としての衣服に新たな生命を吹き込んだ瞬間だった。