ミッフィーの造形美を語るうえで、その原点である児童文学・絵本の世界を避けて通ることはできない。1955年にオランダのグラフィックデザイナーであり作家のディック・ブルーナの手によって産声をあげたミッフィーは、日本では1964年、翻訳家・児童文学者の石井桃子の名訳によって『ちいさなうさこちゃん』として届けられた。削ぎ落とされた簡潔な線と、赤・青・黄・緑・茶・グレーという厳選された「ブルーナ・カラー」だけで構成される世界は、幼い子どもだけでなく大人のクリエイターをも震撼させ続けている。
ディック・ブルーナが遺した徹底したミニマリズムは、現代のプロダクトデザインにも脈々と受け継がれている。余計な装飾を排し、わずかな線の傾きや視線の位置で感情を表現するそのストイックな姿勢こそが、幾星霜を経ても色褪せないプロダクトを生み出す源泉だ。絵本のページを開いたときに感じるあの静けさと安心感が、現代のアイテム一つひとつに宿っているからこそ、私たちは無意識に手を伸ばしてしまう。