脂肪吸引に関して広く流布している「絶対にリバウンドしない」「完全に傷跡が消える」といった宣伝文句には、医学的な観点から注意すべき誤解が含まれています。
「二度と太らない」というリバウンド神話の真相
脂肪吸引によって脂肪細胞そのものの数は物理的に減少します。成人以降は脂肪細胞の総数が基本的に増えないため、「同じ部位に脂肪がつきにくくなる」のは事実です。しかし、残された脂肪細胞自体は摂取カロリー過多によって肥大化します。術後に過食や運動不足を放置すれば、施術部位も再びサイズアップするほか、脂肪を吸引していない背中や内臓周辺に不自然に脂肪がつきやすくなる「体型の歪み」が生じる危険性があります。
カニューレ挿入による傷跡と色素沈着
「傷跡は数ミリで目立たない」と説明されるものの、完全に消滅するわけではありません。カニューレを何度も往復させる挿入口(関節のシワや下着で隠れる位置)には、摩擦熱や物理的ストレスによって赤みや茶色い色素沈着が数ヶ月から1年以上残ることがあります。体質によってはケロイド状に盛り上がるリスクも考慮しなければなりません。
極めて稀だが存在する死亡事故のリスク
日本美容外科学会などの報告でも指摘される通り、脂肪吸引は美容外科手術の中でも侵襲が高い部類に入ります。吸引時に剥がれた脂肪塊が血管に入り込み肺動脈を塞ぐ脂肪塞栓症(肺塞栓)や、お腹の手術時にカニューレが腹壁を突き破る内臓穿孔、過度な麻酔投与による中毒事故など、最悪の場合は命に関わる合併症が過去に報告されています。大量の脂肪を一度に吸引しようとする無理な手術設計や、麻酔管理体制の不備が重大事故を招く主因となります。