ネット掲示板や一部の一般向け健康本で根強く支持される「LDLコレステロール高くても問題ない説」。この言説の拠り所となっているのが、いわゆる「コレステロール長生き説の真相」とされる高齢者追跡調査の断片的な解釈です。一部の疫学調査において「コレステロール値が低すぎる高齢者は死亡率が高い」というデータが存在するのは事実ですが、これには深刻な因果の逆転が存在します。
高齢期における極端な低コレステロール値は、重篤な栄養障害や潜在的ながん、慢性疾患の進行によって脂質合成が衰えた結果として現れる現象(消耗性疾患による低値)に過ぎません。病気だから数値が下がった状態を「低コレステロールだから早死にする」と読み替え、反動として「高いほうが健康で長生き」と結論づけるのは、医学統計学的に明白な誤謬です。
日本動脈硬化学会最新見解および国際的な動脈硬化予防ガイドラインでは、国内外数十万人の追跡メタ解析に基づき、「血中LDLコレステロール値が一定水準を超えて高い状態が持続すると、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患発症リスクが直線的に上昇する」という因果関係を明確に示しています。血管壁の内皮細胞に潜り込み、酸化・変性してアテローム(粥状硬化巣)を形成する主犯がLDLであるという病理的事実は、何一つ揺らいでいません。