タングステンの元素記号が「W」の理由とは?語源と最強金属の秘密

タングステンの元素記号が「W」の理由とは?語源と最強金属の秘密

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化学の初学者が最もつまずきやすいポイントの一つが、タングステンの英語名「Tungsten」と元素記号「W」の不一致です。この乖離が生まれた根本的な原因は、スウェーデン語由来の英語呼称と、ドイツ語由来の鉱物名「ウォルフラム(Wolfram)」の双方が歴史的に並立したことにあります。

18世紀、スウェーデンの化学者カール・ヴィルヘルム・シェーレが未知の酸(タングステン酸)を発見し、スウェーデン語で「重い(tung)石(sten)」を意味する鉱石から「タングステン」と名付けられました。一方で、1783年に世界で初めてタングステンの単離・純粋抽出に成功したスペインのエルフヤル兄弟は、母体となった鉱石「ウォルフラマイト(鉄マンガン重石)」にちなんでこれを「ウォルフラム」と呼称しました。

この「ウォルフラム」というドイツ語の語源は、さらに中世ザクセン地方の鉱山労働者たちの民間伝承にまで遡ります。当時の精錬技術では、スズ鉱石の中にこの黒い鉱石が混ざっていると、スズの回収率が著しく低下してスラグ(鉱滓)化してしまいました。鉱夫たちはその様子を「狼(Wolf)のように獰猛にスズを貪り食い、泡(Rahm / 煤)に変えてしまう厄介な石」と忌み嫌い、「Wolfrahm(狼の泡・狼の煤)」と呼んだのです。

国際純正・応用化学連合(IUPAC)の標準規格において、英語圏では「Tungsten」が正式名称として採用されたものの、元素記号には抽出の歴史とドイツ語圏の鉱物学への敬意を込めて「W」が正式に制定されました。現在でもドイツ、スウェーデン、ロシアなど多くの欧州言語では、元素名そのものを「Wolfram」と呼んでいます。

伊藤 翔太
著者

伊藤 翔太

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。