高圧電力を受電する施設は、電気事業法において「自家用電気工作物」として位置づけられています。国から「自らの責任で安全を確保せよ」という自主保安が義務付けられており、法律に基づく厳格な維持管理が求められます。
設置者に義務付けられている主な項目は以下の3点です。
- 保安規程の制定と届出:維持管理の方法を定めたルールを策定し、経済産業省(産業保安監督部)へ届け出る義務。
- 電気主任技術者の選任:国家資格者である電気主任技術者を配置し、設備の工事・維持・運用の保安を監督させる義務。
- 法定点検の実施と記録保存:月次点検および年次点検(原則として停電点検)を行い、結果を記録・保管する義務。
しかし、中小規模のビルや工場が専任の電気主任技術者を正社員として雇用することは、人件費の観点から現実的ではありません。そこで広く活用されているのが「外部委託承認制度」です。
電気保安協会や民間の登録調査機関・保安管理受託サービス(電気管理技術者)に日常の保安点検を外部委託し、産業保安監督部の承認を受けることで、有資格者の自社雇用義務を免除されます。現在の民間高圧受電施設の約9割がこの外部委託制度を利用しています。
ここで多くのオーナーが見落としがちな最大の盲点があります。「保安点検を外部委託しているから安心」と思い込み、点検員から提出される『年次点検報告書』の推奨更新・B判定・C判定の指摘事項を放置してしまうことです。
外部委託先はあくまで「点検と助言」を行う機関であり、設備の修繕・更新の法的責任と事故時の損害賠償責任はすべて施設の設置者(オーナー・事業者)に帰属します。「点検業者に任せていたから知らなかった」という言い訳は法廷でも行政処分でも一切通用しません。