ネット上のQ&AサイトやSNSで散見される誤用として、「気もそぞろ=恐怖に怯えて縮こまること」と解釈している例があります。「相手の気迫に押されて気もそぞろになった」といった文脈で使用されることがありますが、これは明らかな誤用です。恐怖で竦む場合は「気圧(けお)される」や「縮み上がる」を使うのが正しい日本語です。
また、「単なる睡眠不足による集中力散漫」に対して「気もそぞろ」を使うのも違和感を生みます。前述の通り、この言葉の本質は「別の事象に心を奪われている(情動のハイジャック)」状態にあるため、心当たりとなる対象(期待や懸念)が存在しない物理的疲労には当てはまりません。
【プロの結論】健全な集中力を取り戻すための「心理的バウンダリー」
仕事や対人関係において頻繁に「気もそぞろ」になってしまう人は、心理学でいう「心理的バウンダリー(境界線)」が曖昧になっている傾向が見られます。まだ起きていない未来の結果や、他人の評価、あるいは手元でコントロール不可能な外部要因に思考の主導権を明け渡してしまっているのです。
この状態が長引くと、慢性的な疲労感や作業効率の劇的な低下を招きます。心がそぞろになっていると自覚した際は、まず「今、自分は何に心を奪われているのか?」を紙に書き出し、現在コントロール可能な行動とそうでない懸念を明確に切り分ける作業が、大人のメンタルコントロールとして極めて有効です。