アメリカでの道は平坦ではなかったが、多田野氏は泥臭く実力で結果を示し続けた。2004年、ついにメジャーリーグ(MLB)への昇格を果たし、インディアンスのマウンドで日本人投手として貴重な勝利を刻む。世間の厳しい視線を、マウンド上の圧倒的なピッチングで跳ね返してみせた瞬間だった。
全米のファンを熱狂させたのが、時速80キロ台にも満たない「超スローボール」だ。メジャーの猛者たちが並ぶバッターボックスに対し、意図的に超緩急をつけるスタイルは強烈なインパクトを与えた。失敗の烙印を押された男が、世界最高峰の舞台で観客を沸かせる姿は、スポーツが持つ純粋な感動そのものだった。