昔から部活動の現場や保護者の間で囁かれてきた「中学生が筋トレをやりすぎると背が伸びなくなる」という言説。結論から言えば、適切なフォームと適切な負荷で行う筋トレが身長の伸びを止めるという医学的根拠は存在しないというのが、近年の運動生理学における共通見解です。この噂が広まった背景には、過酷な肉体労働に従事していた前世紀の子どもの発育データや、一部のウエイトリフティング選手の体格から生じた誤解が関係しています。
子どもの骨が伸びるプロセスにおいて極めて重要な役割を果たすのが、骨の両端にある軟骨組織「骨端線(こったんせん)」です。この骨端線は成人の骨に比べて柔らかく、極端な衝撃や過度な圧縮ストレスに弱い特徴を持っています。自己流で過剰な重量を担ぐスクワットやデッドリフトを繰り返すと、骨端線損傷(骨端炎など)を引き起こし、結果として骨の正常な成長を阻害するリスクはゼロではありません。つまり、問題の本質は筋トレそのものではなく、成長期の骨構造を無視した無謀な高重量負荷にあります。
一方で、適度な筋力トレーニングは下垂体からの筋トレによる成長ホルモン分泌効果を促進し、骨芽細胞を刺激して骨密度の向上や健やかな骨伸長をサポートするポジティブな側面を持っています。過剰な恐怖心から運動を制限するのではなく、成長期の身体的特徴を正しく理解したアプローチを選択することが肝要です。