手打十段 うどんバカ一代の代名詞として君臨する「釜バターうどん」。茹で上がった直後の締めない熱い麺(釜抜き麺)の上に、角切りの四角いバターが鎮座し、別添えの生卵と卓上の粗挽き黒胡椒、専用の特製出汁醤油を回しかけていただく一杯です。
現場で実際に器を受け取った瞬間、立ち上る湯気とともに濃厚なバターの芳香が鼻腔をくすぐります。ここで重要なのが「着丼後、間髪を容れずに素早く混ぜ合わせる」という正しい食べ方です。釜抜きの熱気でバターを完全に溶かし、溶きほぐした生卵と麺の小麦デンプンを乳化させることで、まるで極上のカルボナーラのようなとろみとコクが麺全体にまとわりつきます。
讃岐うどん特有の「イリコ出汁の風味と強いコシ」を至上命題とする伝統派からは「邪道」と評されることもありますが、実際に口へ運ぶと、もちもちとした弾力と小麦の香りをバターの塩味と黒胡椒の鮮烈な刺激が力強く引き立てています。単なる奇をてらったB級グルメではなく、麺自体のポテンシャルが高いからこそ成立する完成された調和といえます。