一般的に「延命治療」と呼ばれる医療行為には、心肺停止時に行われる救急救命処置から、寝たきりの状態を長期維持するための人工的な栄養補給まで、多様な段階が存在します。病態が急性期のショック状態であれば一時的な人工呼吸管理によって回復が見込めますが、末期がんや重度認知症の終末期における延命措置は、回復を目的としたものではなく「死のプロセスの先延ばし」となるケースが少なくありません。
現場で代表的に用いられる主な延命治療は以下の5つに大別されます。
- 人工呼吸器の装着:自発呼吸が困難になった際、気管挿管や気管切開を行い、機械で強制的に肺へ酸素を送り込む処置。
- 胃ろう(PEG)・経鼻経管栄養:嚥下機能が廃絶した患者に対し、腹部に穴を開けて胃にチューブを通す(胃ろう)、または鼻から胃へ管を通し流動食を注入する人工的水分・栄養補給(AHN)。
- 昇圧剤・強心薬の持続投与:低下した血圧を維持するため、点滴で強力な薬剤を投与し続ける処置。
- 人工透析(血液透析):腎機能が停止した患者の血液を体外に引き出し、人工腎臓で老廃物をろ過する処置。
- 心肺蘇生(CPR):心停止時に行われる胸骨圧迫(心臓マッサージ)、電気ショック(AED)、強心剤投与。
気になる費用の実態はどうでしょうか。日本の公的医療保険制度には高額療養費制度が存在するため、70歳以上で一般的な所得区分(年収約370万円未満)であれば、1か月の自己負担上限額は外来・入院合わせて約5万7,600円(多数回該当なら4万4,400円)に抑えられます。しかし、ここには重大な落とし穴が存在します。
保険適用外となる「差額ベッド代(個室料・1日あたり5,000円〜3万円程度)」「食事療養費標準負担額」「紙おむつ代(月額1万〜3万円)」「衛生材料費」は全額自己負担です。特に人工呼吸器を装着した長期療養患者を受け入れる療養型病床では、管理費や消耗品代を含めると月額実質負担が15万〜25万円前後に跳ね上がることも珍しくありません。治療が3年、5年と長期化した場合、総額は500万円から1,000万円近くに達することもあります。