ネット上で「イワシのパイ」が検索される際、高確率で結びつけられるのがスタジオジブリの名作『魔女の宅急便』に登場する「ニシンとかぼちゃの包み焼き」です。劇中でおばあさんが孫娘のために丹精込めて薪オーブンで焼き上げ、主人公キキが雨の中ずぶ濡れになりながら届けたものの、「あたしこのパイ嫌いなのよね」と冷たく言い放たれるシーンは、多くの視聴者の記憶に強く刻まれています。
しかし、劇中に登場するパイと、SNSで「狂気の料理」として拡散されるパイには明確な違いがあります。
作中の料理は、薄切りのカボチャとホワイトソース、ニシンを重ね、表面に魚の形を模したパイ生地のデコレーションとブラックオリーブをあしらった上品な北欧風の包み焼きです。一方、ネットで話題をさらうイワシのパイは、本物の魚 丸ごと パイ包み焼きにしたイギリス・コーンウォール 伝統料理の「スターゲイジーパイ(Stargazy Pie)」を指しています。
スターゲイジー(Stargazy)とは「星を見つめる」という意味を持ち、パイ生地の天面からイワシやニシンの頭と尾が突き出し、夜空の星を仰ぎ見ているような構図から名付けられました。この劇的なビジュアルの差異が混同され、「ジブリのあのパイの正体はこれだったのか」という誤解がネット上で拡散し続けています。