ネット上の掲示板やSNSの健康相談コミュニティを観察すると、「上が120だから血管は若い証拠」「下の血圧は体質だから気にしなくていい」といった無根拠な言説が散見されます。しかし、循環器内科学において、これらは完全に否定された危険な誤解です。
大動脈の弾力性が残っている若い年代(30代〜50代前半)だからこそ、収縮期の衝撃を太い血管が吸収し、見かけ上の「上の血圧」が正常値に抑えられているに過ぎません。末梢の細動脈で生じた硬化と高圧状態を何年も放置し続ければ、いずれ太い大動脈の弾性線維も破壊され、50代後半から60代に入った途端、上の血圧も160〜170mmHgへと急上昇する「収縮期・拡張期両方の重度高血圧」へと移行します。
さらに深刻な盲点は、「脈圧(上と下の差)」が縮小することによる循環不全です。通常、脈圧は40〜50mmHg程度が健康な状態とされますが、例えば「上120・下95」の場合、脈圧はわずか25mmHgしかありません。脈圧が極端に狭まると、1回の拍動で送り出される有効な血液循環効率が落ち、心臓はより多くの回数を打たなければならず、知らず知らずのうちに心筋への疲弊が蓄積していきます。