ランドールという特異な悪役に命を吹き込み続けている青山穣は、洋画吹き替えからアニメーション、ナレーションまで幅広く活躍する業界屈指のバイプレーヤーです。劇団青年座の出身で、1990年代から本格的に声優活動をスタートさせた青山は、一度聴いたら耳から離れない粘り気のあるハスキーボイスと、変幻自在のキャラクター造形で確固たる地位を築いてきました。
青山穣の代表作を振り返ると、その振り幅の広さに驚かされます。近年における代表例としては、TVアニメ『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』シリーズのナレーションが挙げられます。緊迫感とシュールなコメディを往復するハイテンションな語り口は作品の代名詞となり、幅広い世代のアニメファンから絶賛を浴びました。また、『銀魂』の岡田似蔵役で見せた冷酷非情な狂気、海外ドラマや映画における個性的な怪優たちの吹き替えなど、一筋縄ではいかない陰影のあるキャラクターにおいて唯一無二の存在感を発揮しています。
原語版でランドールを演じたのは、ハリウッド屈指の個性派俳優スティーヴ・ブシェミです。ブシェミ特有の少し鼻にかかった甲高いトーンと、小刻みに震えるような神経質な語り口は、常にナンバーワンのサリーに対して強いコンプレックスを抱くランドールの精神状態を完璧に体現していました。青山穣による日本語吹き替えは、ブシェミが持つペーソスと小悪党としての狡猾さを寸分違わずトレースしつつ、日本語特有のねちっこい蛇のような息遣いを加えることで、子どもたちに根源的な恐怖を植え付ける見事なローカライズを成立させました。