ネット上のランニングフォーラムでは「雨の日はゴアテックスを履いておけば完璧」という言説が散見されますが、これは現場を知るランナーの間では半ば危険な誤解として扱われています。
確かにゴアテックスランニングシューズは外部からの水滴侵入をシャットアウトする圧倒的な防水性を持ちます。しかし、ランニング動作中は足首の開口部から雨水や跳ね上がった泥水が容赦なく伝い落ちてきます。ゴアテックスの強固な防水膜は、一度内部に溜まった水を「外へ排出しないバケツ」へと変貌させてしまうのです。シューズ内部がチャプチャプと浸水した状態で走り続けると、足底の皮膚がふやけて皮が剥け、強い痛みを引き起こす原因になります。そのため、土砂降りの日にはあえて水抜けの良いメッシュシューズを選び、撥水ソックスやワセリンの塗布で摩擦を防ぐという逆転の雨の日ランニングシューズ対策を採用するベテランランナーも少なくありません。
もう一つの重大な盲点が、雨の日ランニング滑りやすい場所と危険性に対する認識不足です。道路交通環境の研究データによると、アスファルト舗装路面と比較して、雨で濡れた道路の白線や横断歩道ペイント、金属製マンホール、側溝のグレーチング(格子状の金属蓋)は摩擦係数が40%以上も急落します。特にコーナーを曲がる際や下り坂でこれらの障害物に足を乗せると、グリップを完全に失って転倒し、足首の捻挫や骨折に直結します。雨天時はペースを通常より1キロあたり15〜30秒ほど落とし、歩幅(ストライド)を狭めてピッチ(足の回転数)を高める「すり足気味のショートストライド走法」を意識することが、スリップを防ぐ決定的な自衛策となります。