読者の間でしばしば議論されるのが、西園寺羽京が司帝国を裏切った決定的な理由です。表面上は帝国幹部として忠誠を誓っているように見えた羽京ですが、その内面には激しい葛藤と倫理的な拒絶がありました。
司は「既得権益を持つ大人の排除」を掲げ、選別した若者だけを復活させ、不要とみなした大人の石像を次々と破壊(=事実上の殺人)していました。自衛官として人命救助や防衛に命を捧げてきた羽京にとって、無抵抗な石像を破壊する行為は到底容認できるものではありませんでした。
千空たちの存在を知った羽京は、クロムが捕縛された際、極秘裏に千空の通信メッセージを傍受します。そこで千空が掲げた「全人類70億人を一人残らず救う」という途方もない誓約に触れ、密約を交わすことを決断しました。
その際、羽京が千空に突きつけた条件こそが「誰も死なないこと」でした。千空が迷わずその条件を飲み、血を流さずに司帝国を無血開城させる作戦を実行したことで、羽京は正式に科学王国への合流を果たしたのです。彼の名言である「誰も死なないって、約束してくれるかい?」「嘘をついてる音じゃないね」には、命の尊厳を何よりも重んじる彼の信念が凝縮されています。