ネット上の言説や知恵袋などの相談投稿を見渡すと、大腸がんに関して致命的な誤解が放置されている実態が目立ちます。多くの患者が手遅れに近い段階で発見される背景には、いくつかの根強い「思い込み」が存在します。
最大の罠は、「出血を痔によるものと自己診断して放置する」パターンです。便に血が混じっていたり、トイレットペーパーに鮮血が付着していたりした場合、「昔から切れ痔があるから」「排便時に痛まなかったから大丈夫」と都合よく解釈してしまう心理が働きます。実際には、直腸やS状結腸に生じたがん病変からの出血は鮮血に近く、痔の症状と肉眼で見分けることは熟練した医師でも内視鏡を用いなければ不可能です。
もう一つの危険な誤解は、「自覚症状が出てから病院に行けばよい」という安易な先延ばしです。大腸がんの初期病変は神経が通っていない粘膜層にとどまるため、早期の自覚症状は基本的に存在しません。腹痛、便が細くなる(便柱細小)、貧血、頑固な便秘と下痢の交替といった症状が現れた時点で、腫瘍はすでに腸管の内腔を塞ぎかけるほど巨大化しているケースが大半を占めます。
さらに警戒すべきは、若年性大腸がん(20代・30代の発症)に対する油断です。がんは高齢者の病気という固定観念から、若い世代では激しい腹痛や出血があっても医師側・患者側の双方が大腸がんを疑わず、発見が遅れてステージ3〜4で見つかる悲痛な事例が報告されています。リンチ症候群や家族性大腸腺腫症といった遺伝的素因を背景に持つ場合もあり、「若いから大丈夫」という理屈は医学的に全く通用しません。