本作の完成度を決定づけた要素として、音楽とロケ地美術の卓越した演出が挙げられます。
主題歌であるあいみょんの『今夜このまま』は、ビールの炭酸のように弾けて消える切ない感情と、「とりあえず今夜をやり過ごす」大人のやるせなさを軽快なビートで歌い上げました。晶が仕事帰りに5tapの重い扉を開ける瞬間に流れるこの楽曲は、過酷な現実とつかの間の安らぎをつなぐ重要なスイッチとして機能していました。
対照的に、ドラマの劇的な転換点で流れるビッケブランカの挿入歌『まっしろ』は、美しいピアノの旋律とファルセットボイスが、登場人物たちが心の奥底に押し殺していた本音や孤独を静かに浮かび上がらせました。特に第6話のラストや最終盤の感情の吐露シーンにおいて、言葉以上に雄弁にキャラクターの心象風景を代弁しています。
また、物語のもう一つの主役とも言えるのが、クラフトビールバー「5tap(ファイブタップ)」です。マスターのタクラマカン斎藤(松尾貴史)が寡黙に注ぐ個性豊かなビールは、単なるアルコールではなく「本音を吐き出すための安全な触媒」でした。都内(雑司が谷や清澄白河界隈)の風情ある路地に佇むこの空間設計は、多くの視聴者に「自分にもこんな逃げ場所が欲しい」と強烈に憧れさせました。