こうした現場の歪みを受け、2020年代半ばから2026年にかけて、役職定年制度を全面的に廃止する大手企業が急速に増えています。かつては人件費抑制の切り札とされた制度が、いまや企業の競争力を削ぐ「負の遺産」と見なされ始めたのです。
役職定年を廃止・見直した主な代表的企業
パナソニックグループ、日立製作所、サントリーホールディングス、りそなホールディングス、三井住友信託銀行、カシオ計算機など
企業が役職定年の廃止に舵を切る決定的な理由には、以下の3つの構造変化があります。
- 深刻なシニア人材の意欲低下とノウハウ流出:一律降格により意欲を失ったベテランが業務効率を落とすだけでなく、高いスキルを持つ優秀なシニアが外資系や競合他社へ流出する危機感が高まったこと。
- 深刻な人手不足と定年延長(65歳・70歳雇用):少子高齢化に伴い、50代・60代の戦力化が企業の死活問題となる中、年齢で一律に能力を封じる制度が実情に合わなくなったこと。
- 「ジョブ型雇用」への本格シフト:人に仕事をつける「メンバーシップ型」から、仕事の責任と成果に対して報酬を支払う「ジョブ型」への転換により、「何歳か」ではなく「どんな役割・成果を果たしているか」で処遇を決める仕組みへ移行したこと。
ジョブ型の人事制度下では、60歳を過ぎても高い成果を上げていれば役職や高年収が維持される一方、若手であっても成果が出せなければ降格されます。年齢による一律の足切りをやめ、「実力と役割に応じた適正な処遇」へとシフトするのが2026年の明確な潮流です。