「専門店=高級」というイメージを持つ人は少なくありません。しかし、現場の流通構造を紐解くと、近くの肉屋が安い理由には極めて合理的な経済的背景が存在することが分かります。食肉卸売市場や農林水産省の流通統計データを参照すると、一般的な大手スーパーマーケットの場合、生産者から「農協・集荷業者 ➔ 食肉市場(と畜・解体) ➔ 一次卸 ➔ 二次卸 ➔ プロセスセンター(小分け・パッキング) ➔ 店舗」という多段階の流通プロセスを経由します。この各工程で発生する運送費、中間マージン、トレー容器代が店頭価格に上乗せされているのが実情です。
一方、近年人気を集める卸直営の精肉店が安い最大の要因は、問屋直営や枝肉(一頭・半頭単位)での直接仕入れによる中間流通コストの大幅な削減にあります。ブロック肉の脱骨や整形を自店の熟練職人が店内のバックヤードで行うため、加工外注費がかかりません。さらに、対面量り売りを中心とする店舗では、発泡スチロールトレーやラップ包装の資材コスト、人件費も最小限に抑えられます。
また、精肉店ならではの「ロスゼロ構造」も見逃せません。高級部位(サーロインやヒレ)を贈答品やステーキ用として販売する一方で、端肉やスジ肉を自家製ハンバーグ、煮込み、カレー用、あるいは店頭の惣菜メニューへと無駄なく転用します。肉の可食部を100%使い切るサイクルが確立されているからこそ、近くの精肉店のおすすめ切り落としや挽き肉が、大手スーパーの特売品を凌駕する鮮度と低価格で提供できるのです。