一般の医療情報で最も誤解を招いているのが、「脱感作療法」と「減感作療法」の使い分けです。辞書や古い文献では同義語として扱われるケースもありますが、近年のアレルギー専門医療においては、その「目的」「持続期間」「免疫機序」において明確に区別されています。
現在、スギ花粉症やダニアレルギーに対して行われる舌下免疫療法(SLIT)や皮下免疫療法(SCIT)は、学会等の正式名称では「アレルゲン免疫療法(減感作療法)」と総称されます。これは年単位の時間をかけて抗原を定期投与し、体内の制御性T細胞(Treg)を誘導してIgG4などの遮断抗体を増やし、「根本的な免疫寛容(アレルギーを起こさない体質への改善)」を恒久的に獲得させる治療です。
対照的に、急性期医療で行われる狭義の「薬剤脱感作療法」などは、抗がん剤(プラチナ製剤やタキサン系)やペニシリン系抗菌薬にアレルギーを持つ患者に対し、治療上その薬剤が絶対に必要な局面に限って実施されます。数時間から数日という短期間で数千分の一から段階的に薬剤を静注し、肥満細胞の受容体を一時的に反応不能(不応期)に追い込みます。重要なのは、この薬剤脱感作で得られた寛容状態は一時的な現象に過ぎない点です。治療が終了して薬剤の体内濃度が消失すると、数日から数週間で再び元の過敏状態に戻るため、次回投与時には再度ゼロから脱感作を行わなければなりません。