「短期間で激変!2ヶ月で10キロ痩せることは本当に可能なのか?」という疑問に対し、生化学および臨床医学の観点から導き出される回答は「初期体重と体脂肪率の条件付きで可能だが、万人向けではない」という極めてシビアな現実です。
まず押さえるべきは、脂肪燃焼のエネルギー収支です。人体の脂肪組織1kgを消失させるには、約7,200kcalのアンダーカロリー(消費カロリーが摂取カロリーを上回る状態)を生み出す必要があります。つまり、純粋な脂肪のみで10kgを落とす計算を立てる場合、2ヶ月(60日間)で合計72,000kcal、1日あたり実に1,200kcalもの赤字を毎日休まず積み上げなければなりません。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」によると、成人男性の推定エネルギー必要量は1日約2,400〜2,700kcal、成人女性は約1,800〜2,050kcalです。もし女性が毎日1,200kcalのマイナスを作ろうとすれば、1日の摂取カロリーを600〜800kcal前後に絞り込むか、通常の食事を維持したまま毎日ハーフマラソン相当の運動をこなす必要があります。これが「誰にでも勧められるダイエットではない」と警鐘が鳴らされる根本的な理由です。
しかし、実際の減量プロセスでは「10キロすべてが脂肪」というわけではありません。日本肥満学会の治療ガイドラインでも示されている通り、減量初期の1〜2週間で落ちる重量の大半は、体内に蓄積されていた筋グリコーゲンとそれに結合していた水分(グリコーゲン1gに対し水分約3〜4g)です。糖質を断つことでまず体内の余分な水分が2〜3kg一気に抜け、その後に本格的な体脂肪の動員が始まります。この生理学的ステップを正確に理解していれば、体重計の数字の推移に一喜一憂せず、冷静な減量計画を遂行できます。