世間に「水素水はただの水ではないか」という強い疑念を植え付けた最大の契機は、2016年12月に独立行政法人国民生活センターが発表した商品テスト結果でした。当時、健康志向の高まりとともに過熱していた市場に対し、同センターは容器入り水素水10銘柄および水素水生成器9銘柄を対象とした大規模な品質調査を実施しました。
その検査報告書に記されていた数値データは、業界関係者と消費者の双方に衝撃を与えました。複数の容器入り製品において、賞味期限内であるにもかかわらず溶存水素が全く検出されない(測定限界以下)という実態が浮き彫りになったのです。高額な価格で販売されていながら、実質的に「ただの水」を開封直後から飲まされていた消費者が存在していた事実が、公的機関の測定によって白日の下にさらされました。
事態はこれにとどまりませんでした。翌2017年3月には、消費者庁が水素水販売事業者らに対して景品表示法違反(優良誤認)に基づく措置命令を一斉に下しました。販売業者がWebサイトや広告で謳っていた「飲むだけで痩せる」「悪玉活性酸素を100%消去してアンチエイジング」といった表示に対し、裏付けとなる合理的な根拠の提出を求めたところ、科学的に妥当なデータが提示されなかったためです。
これらの一連の行政処分と報道各社による大々的なニュース報道によって、水素水が嘘と言われる理由が社会全体に強く刻み込まれました。健康増進効果を期待して購入した人々が「効果なしの真相」を知り、失望とともにメディアへ寄せた告発が、ブームの急速な収束を決定づけました。