突然足の爪が剥がれるのは一体なぜなのか。ぶつけた記憶がないのに剥がれる裏には、見逃せない病気のサインが潜んでいることがあります。取材を進めると、多くの人が「外傷=激痛」と思い込んでいる一方で、外来を訪れる患者の一定割合が「全く痛みがなかったのに気付いたら浮いていた」と訴えている実態が浮き彫りになります。爪の剥がれは、大きく分けて「外傷性」と「疾患性」の2つに分類されます。
まず、強打や長時間の圧迫による典型的なケースが、足の爪の内出血と剥がれです。マラソンやサッカーなどの激しいスポーツ、あるいは爪先に余裕のない硬い靴を履き続けた結果、爪の下にある毛細血管が破綻し「爪下血腫(そうかけっしゅ)」を形成します。溜まった血液が爪甲(爪の硬い部分)を爪床(爪下の皮膚)から物理的に押し上げ、数週間から数ヶ月遅れてポロリと外れる現象です。受傷直後には鈍痛があっても、血腫が固まり爪が遊離する頃には神経の圧迫が解け、「痛くないのに足の爪が剥がれる理由」として表面化します。
一方、外傷の記憶が一切ないにもかかわらず、先端から徐々に白く浮き上がってくる場合は爪甲剥離症の症状と治療に目を向ける必要があります。爪甲剥離症は、爪甲が先端側から爪床から浮き上がる疾患で、接触皮膚炎(洗剤や化学物質)、乾癬、甲状腺機能亢進症などの全身疾患が引き金となるケースが確認されています。痛みや痒みといった自覚症状が乏しいため、発見が遅れやすい点が特徴です。
さらに見過ごせないのが、爪水虫による爪剥がれです。白癬菌という真菌が爪の内部に入り込むと、爪の主成分であるケラチンを食い荒らして組織をスポンジ状に脆く変質させます。日本皮膚科学会の疫学調査データによると、日本人の約10人に1人、推計1,200万人以上が爪白癬を抱えているとされています。進行すると爪が黄色や白色に濁り、ボロボロと崩れて最終的に剥がれ落ちますが、菌が神経を直接刺激しないため、重症化するまで無痛で経過するケースが大半です。
加えて、「足の爪が根元から剥がれる原因」として近年臨床で注目されているのが「爪甲脱落症(そうこうだつらくしょう)」です。これは子どもの間で流行する手足口病や高熱を伴う感染症に罹患した数週間〜2ヶ月後に、爪の根元にある「爪母(そうぼ:爪を作る工場)」の細胞分裂が一時的に停止し、新しい爪と古い爪の間に隙間ができて脱落する現象です。大人であっても強い精神的ストレスや過度な全身衰弱によって爪母の機能が滞り、時間差で根元から爪が丸ごと抜け落ちる事態が報告されています。