過剰な水分摂取によって血液が極端に薄まり、血液中のナトリウム濃度が正常値(135〜145mEq/L)を大きく下回る病態を低ナトリウム血症と呼び、これに伴って生じる一連の中毒症状を一般に「水中毒」と称します。日常的な水分過剰摂取で見られる初期の不調は、夏バテや慢性疲労と酷似しているため、見過ごされやすい傾向にあります。
初期段階では、細胞の浸透圧バランスが崩れることで自律神経や筋肉のイオン伝達が乱れ、水分の取りすぎによるだるさや脱力感、生あくび、ぼんやりとした集中力の低下が現れます。体内の水分を排泄しようと頻尿になる一方で、細胞間質に水が溜まることで、腎臓の機能不全に伴うむくみが手足やまぶたに生じ始めます。
この段階で「老廃物が溜まっているからもっと水を飲もう」と誤認して水分補給を重ねると、病態は一気に重症化へと舵を切ります。ナトリウム濃度の低下が進行すると、脳細胞が水分を吸って膨張する脳浮腫を引き起こし、強い吐き気、激しい頭痛、嘔吐、意識の混濁、さらには痙攣発作や呼吸停止といった致死的な水中毒の症状を呈する危険があります。