どれほどキレの良い変化球であっても、投手の身体を蝕む投球であってはなりません。整形外科学やスポーツ医学の臨床データにおいて、カーブはかつて「最も肘に悪い球種」と恐れられていました。しかし、2020年代以降のバイオメカニクス研究によって、適切に投げられている限り、カーブが肘の内側側副靭帯(UCL)にかける外反ストレスは、全力投球のストレートと大差がないことが実証されています。
問題となるのは、前述した「手首を過剰にひねる誤った投げ方」です。肘が下がり、手首を外側にねじった状態でリリースを迎えると、肘の内側に対して引き裂かれるような牽引ストレスが集中します。これが肘を痛めないフォーム詳細まとめにおいて最大の警戒ポイントとなります。肘の位置を両肩のラインよりも高く保ち、体幹の回旋に腕が遅れてムチのようにしなって出てくる「ゼロポジション」を維持すること。そしてリリース後に手のひらが自然と内側(回内)を向くフォロースルーを妨げないことが、靭帯を守る絶対条件です。
一方で、依然として議論が紛糾しているのが少年野球におけるカーブの是非です。日本整形外科学会や日本臨床スポーツ医学会が発表している投球障害予防ガイドラインでは、骨端線(成長軟骨)が閉鎖していない小学生年代での変化球投球に対して強い警鐘が鳴らされ続けています。
指導者の間では「勝ちたいから変化球を解禁すべきだ」という目先の勝利至上主義と、「将来の関節を守るために直球とチェンジアップ系に限定すべきだ」という育成重視の思想が長年対立してきました。医学的見地から言えば、骨と靭帯の付着部が未成熟な小学生段階では、技術的に正しいフォームを完璧に再現し続ける筋力も備わっていません。指先の力加減がブレるだけで容易に肘の剥離骨折(リトルリーグ肘)を引き起こすため、中学生後半以降、骨格が安定するまでは本格的なカーブの多投は厳に慎むべきであるというのが、2026年における医療現場の一致した見解です。