蜂とアブでは、人間を襲う動機と攻撃のメカニズムが全く異なります。この違いこそが、アブの生態と吸血の真相を紐解く最大のカギです。
蜂が人間を刺す理由は純粋な「自衛行動」です。巣や自身に危険が迫った際、メスの産卵管が変化した「毒針」を突き刺し、神経毒やアミン類などの混合毒を体内に直接注入します。これに対し、アブが人を刺す理由と毒性を検証すると、アブには蜂のような毒針は存在しません。人を襲うのは産卵を控えたメスのアブだけであり、卵を発達させるための動物性タンパク質(血液)を得る目的で吸血を行います。
アブの攻撃手法は「刺す」というよりも「皮膚を刃物のような大あごで切り裂く」行為です。皮膚を噛み破って滲み出た血液をすする際、血液の凝固を防ぐ特殊な唾液成分を注入します。この唾液成分に対して人体の免疫系がアレルギー反応を起こすため、アブに噛まれた跡の特徴として、中心に出血点や小さな傷口が残り、直後から強い熱感と激痛、猛烈な痒みが生じます。