奈良公園を訪れると、街中を当たり前のように歩く鹿の姿に驚かされます。春日大社の神使(しんし)として手厚く保護されてきた歴史を持つ彼らですが、実は飼育されているのではなく、国の天然記念物に指定された完全な野生動物です。朝になると春日山のねぐらから公園内へ下りてきて、夕暮れ時には再び山へと帰っていく自立した生活を送っています。
観光客の間で人気のアクティビティといえば「鹿せんべい」の餌やりです。鹿せんべいの値段は1束200円(税込)で、売上の一部は鹿の保護活動に役立てられています。観光客がおせんべいを見せると、鹿がペこりとお辞儀をする可愛らしい姿が有名ですが、これは人間への礼儀ではなく「早くそれをちょうだい」という催促と焦りのサイン。焦らしすぎると服を引っ張られたり、後ろから突かれたりすることがあります。
特に春の出産期(5月〜7月頃)の母鹿や、秋の発情期(9月〜11月頃)の雄鹿は神経質になりがちです。小さな子ども連れの場合、鹿に噛まれる注意点として「手の中におせんべいを隠さない」「おせんべいがなくなったら両手を広げて見せる」というルールを徹底しましょう。鹿は手のひらが見えると、もう食べ物がないことを瞬時に理解してすんなり立ち去ってくれます。