1964年に発表された『非色』もまた、現代の世界情勢と深く共鳴する作品だ。戦後の日本で黒人米兵と結婚し、ニューヨークのハーレムへ渡った日本人女性・笑子の目を通じて、アメリカ社会に根深く存在する人種差別と階層分断が描かれる。
圧巻なのは、単に白人対黒人という図式にとどまらず、黒人コミュニティの内部にある差別や、日本人自身が抱く無自覚な偏見にまで切り込んでいる点だ。多様性やインクルージョンが叫ばれつつも、ナショナリズムや排外主義が再燃する2026年の国際社会において、この小説が示す人間の業と連帯の可能性は、今なお色あせるどころか輝きを増している。