図書カードによる事前の刷り込みを終えた後、聖司が仕掛けた直接接触のプロセスも見事なまでの電撃戦でした。雫の教室の前に堂々と現れ、同級生の視線を一切気にせず屋上へと連れ出すシーンは、作品屈指の名場面として知られています。
この天沢聖司の屋上での対話は、学校という閉鎖空間における雫の心理的逃げ場を巧みに奪う形となりました。周囲に冷やかされる状況をあえて作り出し、二人きりの空間へと誘導することで、雫の意識を完全に自分へ向けさせることに成功しています。
さらに、早朝の自転車二人乗り、秘密の工房への招待、そして夜明けの高台での将来の約束に至るまで、聖司の行動は常に主導権を握り続けています。相手が断れない絶妙なシチュエーションを演出しながら距離を詰めていく手腕は、中学生離れしたコミュニケーション能力の賜物です。