ハクというキャラクターに圧倒的な品格とみずみずしい生命感を与えたのが、当時わずか13歳だった声優の入野自由だ。まだ声変わり前の澄み切った声でありながら、千尋を導く毅然とした凛々しさと、どこか影のある危うさを完璧な演技で表現した。宮崎駿監督は彼のアフレコに対して極めて細やかな演出指導を行い、ハクが持つ「神様としての神聖さ」と「湯婆婆の手先としての冷徹さ」の危ういバランスを引き出した。
ハクが美しい白い龍へと姿を変え、空を舞う変身シーンは、アニメーション映画の歴史に残る真髄と言える。龍としてのしなやかで躍動感あふれる身のこなしと、傷つき血を流しながら苦悶する生々しさ。宮崎監督はハクを通じて、美しさと残酷さが表裏一体となった「自然そのものの本質」を描き出そうとしたのだった。