昭和の情緒をそのまま残す路地裏に入り込むと、観光ガイドブックには決して載らない秘伝のタレを守る惣菜店や、朝揚げの練り物を行列覚悟で提供する専門店が目を引く。テレビや雑誌の取材を長年辞退し続けてきた頑固一徹な老舗のコロッケ、あるいは店主が仕込みに3日をかける煮込み料理など、地元住民が密かに通い詰める穴場スポットには食の真髄が詰まっている。
名物の食べ歩きグルメは、単なるファストフードの域を遥かに超えている。揚げたてのメンチカツを片手にアーケードをのんびり歩き、店頭で店主と軽妙な世間話を交わす。この時間と空間の豊かさこそが、人々を惹きつけてやまない最大の理由だ。レトロでエモーショナルな体験を求める若者たちが足繁く通い、古き良き街の物語をSNSで発信することで、隠れていた名店に再び光が当たっている。