パーソナルな日本愛とは対照的に、ビジネスの現場では過酷な壁に直面してきました。その代表例がテスラによる日本市場開拓です。北米や中国、欧州で爆発的な普及を記録したテスラですが、ハイブリッド(HEV)や軽自動車が圧倒的シェアを誇る日本国内においては、長い間販売台数の拡大に苦戦を強いられてきました。かつてマスク氏が「日本でのテスラシェアの低さは信じ難い」と苛立ちを滲ませた場面もあったほどです。
しかし、そこで撤退を選ばないのがマスク氏の真骨頂です。テスラジャパンは従来の車両販売一本槍から方針をシフト。日本国内の高速道路や商業施設への「スーパーチャージャー(急速充電器網絡)」の急速な整備を加速させ、他社EVへの開放も推し進めています。充電インフラのボトルネックを自らの手で解消し、市場環境そのものを塗り替える方針に出たのです。
さらに注目すべきは、家庭用蓄電池「Powerwall」や産業用メガパック(大型蓄電システム)の浸透です。自然災害が多く、電力インフラのレジリエンス向上が急務となっている日本において、テスラのエネルギー事業は確実にシェアを拡大させています。自動車メーカーという枠組みを軽々と飛び越え、日本のエネルギー基盤に自社のエコシステムを根づかせる布石を着々と打っています。